2014年9月30日火曜日

まわりの人たちについて

 
 みなさまどうもDobrý den(こんにちは)!

 今日はぼくの身のまわりの人たちについて書こうと思います。

 ぼくの通っている大学(院)の学部はFaculta humanitních studií(人文学部)といって、カレル大学のなかでは1番新しい学部です。ぼくはその名前とこの学部の売りのひとつ、Central European Studiesというものに惹かれたんですが、フタを開けてみれば、いわゆる流行の「国際系」学部だったみたいです(まだ総体としては掴みきれていません)。ぼくは学部も国際系だったので、「国際系はもう充分」と思っていたのですが、どうやらぼくは国際系から逃れられない運命のようです。
 ともかく、そういうことなので、この学部にはたくさんの留学生がいます。1番多いのはフランス人、つぎがドイツ人、あとはその他諸々ヨーロッパの人々、というところでしょうか。1学年60人ほどですが、アジア人はぼくを含めて2人、偶然にも2人とも日本人です。似たような状況にいたことがある人ならよく分かるかもしれませんが、こういう場合、日本人であるというだけでなかなかおもしろい経験をすることになります。
 ぼくがヴェネツィアに留学していた5年前はここまでではなかったと記憶してますが、端的にいって、彼ら西洋人の日本文化にたいする関心は非常に高いです。高すぎて引くくらいです、じっさい。個人的な観測だと、日本文化に興味があって、嬉々としてぼくらに話しかけてくる人のうち75%以上は日本のアニメが大好きです。ジブリ作品はもちろん、世界のクロサワ、はては涼宮ハルヒなど、ふつうの日本人よりもはるかに日本の映像作品が好きです。ぼくはまだそっち系もある程度分かるのでワリと彼らに反応できますが、そうできない場合の彼らの落胆っぷりは見てて笑えます。
 とまぁここまではいいんです。こっちはなにもしなくても周りに外国人がよってきて、喋りかけてくれるわけですから。あるいはときどき「ニンジャー」とか「ゴジラー」とかやって笑いをとればいい。ただ問題は、たとえ彼らの関心に応えられるとしても、このままではぼくらはなかなか彼らと仲良くなりづらいということですかね。仲良くなりづらいというか、うまく関係を進めることができないというか。彼らが興味があるのはそのままでは括弧つきの「日本人」であってぼくら個人ではない。やっぱりこれでは知的欲求を満たすだけの皮相的な「異文化コミュニケーション」しかできません。ほんとうに文化的といえるものは個人の底のほうにしかない。
 
 ということで、(長い前置きになりましたが)この投稿でも、国籍をいったんハズして、具体的なふたりの友人について書いてみようと思います。CとL。どちらも女性です。
 ぼくが彼女たちはじめてマトモに話したのはたしか23日。プラハで1番大きなRoxyというクラブで留学生むけの巨大なパーティーがあった日です。
 彼女たちはとにかくタバコをバカバカ吸うんです。それがなかなかサマになってるんですね。ぼくも喫煙者ではありますが、彼女たちとは比較にならない。まだ20歳かそこらでしょうけど。で、踊りまくるんです。しかもそれがふつうクラブで見られるようなフラフラ/クネクネ踊りではなく、ちゃんとしたパートナー・ダンスというやつですね。手を繋ぎながら高速で弧を描いてグルグルまわったり、なにやらカウボーイに見立てて輪投げのようなことをしたり、とにかくステップからなにからあまりにも完璧に、しかも女の子ふたりで踊るんで、まわりの人間は(ぼくを含め)口を開けてただ観てるしかない。そこには目に見えるくらい完全な調和が、他を寄せつけないものがあったわけです。
 でもそこにはやっぱり心ない邪魔が入るんですね。男です。しかも悪いことに、片方、よりダンスのうまい、より「女らしい」Lのほうにばかり男が寄ってくる。だからLはひっきりなしに誰か別の男の相手をしなけりゃならない。数多の男たちが崩れ落ちていくのをぼくと友人のM(男)は笑いながら見ていたんですが、Cは終止浮かない顔をしている。ぼくとかMがダンスの相手をしようと頑張るんですが、やっぱり全然ダメなんです。
 そうこうしているうちに時計の針は朝4時をまわる。クラブは終業、メトロもトラムも始発がでる時間です。みんなもうヘトヘト、眠たげにその場を去ろうとするわけですが、Cの姿が見当たらない。ぼくも早めに出たからわかったんですが、彼女はひと足先にクラブの外に出ていたんです。で、ぼくを見たCは言いました。
 「私はレズビアンで女の子が好きだけど、彼女は男の子が好きなの。これってすごく哀しい。」
ハッとして彼女の顔をよく見ると、目の下にはマスカラの落ちた跡がありました。


 と、こういう類いの経験は、日本ではなかなかできないものだと思います。ほんとうにどこか外国の映画を観ているようでした(最近観た『アデル、ブルーは熱い色』がフラッシュ・バックしました)。
 LがCのことをどのくらい知っているのか、ぼくはLにもCにも直接聞いてはいないですが(たぶん全部知っているでしょう)、彼女たちはいまもとても仲良くやっています。 




(写真は寮の部屋からの景色。気づけば前回から女の子のことしか書いてないですね。ぼくの底はこんなもんです。HAHAHAHAHA!! あるいは今度は性別をハズして書いてみるのもおもしろいかもしれません。)

 
 

2014年9月27日土曜日

ようやく初投稿!

 
 はじめまして。プラハに留学中の大学院生が書いております。

 ほんとうはプラハに着いたらいち早くブログかなにかを立ち上げてやろうと思っていたんですが、ネットが繋がらない、ブログというものがイマイチわからない、毎日なにやらウェルカム・パーティーがあってモノを書く時間も余裕もない、ということで、いつのまにかチェコ入国から12日も経ってしまいました(9月15日夜8時に到着)。

 12日。あっという間でしたが、中身はやはりそうとうに濃厚でした。それをひとつの記事にまとめるとなるとかなり大変なので、まぁのちのち触れることにして、今日はとにかく初投稿ということで、気楽にざっくりと書いていこうと思います。

 …やっぱり初めは自己紹介でしょうかね?

 ぼくはミラン・クンデラという小説家が好きでチェコに来ました。少なくとも公式にはそういうことになっています。彼はチェコのブルノという街出身で、いまはフランスに住んでいます。代表作はやっぱり『存在の耐えられない軽さ』かな。すごくおもしろい小説です。もう80歳を越えたおじいちゃんですが、今年なんとまた新しい小説を出しました。なかなか頑張りますね。ぼくはまだ読んでないですが。
 クンデラをはじめて読んだのはもうかれこれ5年前。じつはヴェネツィアで読んだんですよ。というか当時はヴェネツィアに留学していたんです(つまり今回で留学は2回目なんですねぼく。このことはすごく大きいです。はじめてじゃないというのは)。でもじっさい、その時はクンデラを追ってチェコに来ることになるとは思ってもみませんでした。ただものすごい衝撃を受けたことだけははっきり憶えています。その衝撃が音叉の震えみたいにまだじんわり続いてるんですね。それがなければチェコになんて来てないです。
 
 こっちではカレル大学というところに所属しています。いちおうチェコでは1番有名な大学です。中央ヨーロッパで1番古い大学でもあります。創立1348年。カレルとは、有名なカール4世のこと。チェコ語でカレル。英語でカール。フランス語ではシャルル。ちなみにまだ授業には1度もでていないので、どんなところなのかはまだよくわかってません。

 …自己紹介はこのへんにして、チェコに到着して間もないあたりのことを書きましょうか。

 15日、空港にはあるチェコ人女性が車で迎えに来てくれました。彼女は本名ミハエラ、愛称ミーシャといって、ぼくと同い年で、背が高く(たぶんぼくよりも高い)、髪の長い、顔立ちの整った少しシャイな女性。じつはぼくの所属する学部にはチューター制度というものがあって、留学生ひとりにつきチェコ人学生がひとり、チューター(世話係)としてバディーを組むことになっているんです。それでどうやら有り難いことに彼女がぼくを選んでくれたというワケ。日本文化に興味があるらしく、プラハ空港からぼくの寮までの車内では、宮崎駿とか押井守とか黒澤明の映画の話題に花が咲きました。
 次の日(16日)もたしか、ミーシャといっしょにいたと思います。寮での手続きなど、事務的なことはぜんぶ彼女にまかせっきりでした。なんせ寮のレセプションは英語が話せないんだから。先が思いやられます(ちなみにぼくはまだほとんどチェコ語がわかりません)。手続きが終わったあとはふたりで街に繰りだしました。たしかその時こっちの携帯を買ったのかな? ZTEという会社のもの。スマホなんだけど、日本円で1万円もしなかったですね。安い。
 携帯のあとは、チェコの伝統料理が食べられるレストランへ連れて行ってもらいました。地下は洞窟のような内装の小洒落たお店。おいしいチェコビールとスヴィーチコヴァ・ナ・スメタニェ(野菜とサワークリームを煮込んだソースを牛肉にかけた料理)を食べながらミーシャと話していると、突然、彼女の口から驚きのひと言が。
「私の夫もじつはカレル大の学生で……」。
そう、彼女はすでに結婚していたのです。学生結婚。しかも話をきくと、ちょうど三ヶ月まえに! 旦那さんはニーチェを勉強していて、黒澤映画をすべて観ているそうです。いやはや、興味ぶかい。でもショックはショックでしたね、やっぱり。だって男だったら誰だってすこしは期待するでしょう(じっさいチューターとつき合いはじめるということは珍しくないらしい)。まぁ致し方ないけど、ちょっとぼくの期待は裏切られるのが早すぎました。最近、まわりの女の子の結婚やら婚約が増えてきたんですが(そういう年齢です)、まさかチェコまで結婚ラッシュの波が追ってくるとは。
 ミーシャとは、今後は家族ぐるみのつき合いになりそうです。
 

(写真はプラハでほとんど最初に撮ったもの。ほんとうにとりとめもない雑記になってしまいましたが、今日はこのくらいでお許しください。それではまた。)